スプリンギンマガジン

インタビュー

スズキ✖️Springin’ 「軽トラコンテスト」の舞台裏

スズキ✖️Springin’ 「軽トラコンテスト」の舞台裏

昨年開催され大好評をいただいた、スズキ×Springin’「軽トラコンテスト」!
今回は影の立役者であるスズキ株式会社のIT本部デジタル化推進部DX推進課の大瀧さんに、Springin’の開発者が、コンテストにかける思いをお聞きしました!

 

第一回コラボコンテストを終えて

 

中村: 昨年度、コラボコンテストを開催していただきましたが、そもそもなぜSpringin’でコンテストをやろうと思われたのですか?また、実際にご一緒してみてどうだったかという点もお伺いしたいです。

大瀧:一番最初は、「ジャパンモビリティショー」という(旧:東京モーターショー)、車に限らずモビリティの祭典があって、そこでキッザニアと連携することになりまして。「何をやろうかな」と思っていたときに、ちょうどコテンラジオで俊介さんが出演された回を聞いて、「これは面白いな」と思ったのがきっかけでした。

モビリティショーでSpringin’を使って何かできたらと思ったのですが、実現できませんでした。それでも、「別の形で何かやらないと!」という気持ちは強くありました。

Springin’は小学生ユーザーが多いと聞いていたので、「将来スズキで一緒に働いてくれる人が、Springin’をきっかけに生まれたらいいな」と思ったんです。10年後に仲間になるかもしれない人たちに、スズキを知ってもらい、愛着を持ってもらうことを目的にSpringin’を導入した、というわけです。

中村: 壮大すぎてビックリしますよね(笑)

大瀧:壮大すぎて誰にも理解されませんでした(笑)。なので、まずはこういう取り組みを通して、「自動車メーカーでもこんなに面白いことができるんだよ」ということを、直近の就活生や若手の方たちに知ってもらえたらと思ったんです。一緒に働きたいと思ってくれる人が増えたらいいなと。表向きは、そういう目的で進めたということにしました。

中村: 実際にやってみて、思った通りだったことと、思わぬことはありましたか?

大瀧:思った通りだったことは、ほとんどありませんでしたね。

中村: そうなんですね!

大瀧:テーマをどうするか、すごく悩みました。こちらとしても伝えたいことはありましたが、ゲームを作る上では作りやすさも大事ですし。初めての試みだったので、そのバランスもわからないまま「軽トラ」に決まりました。こちらとしては「軽トラのことを知ってもらえたらいいな」くらいの気持ちだったんですが、想像を超えるユニークな作品がたくさん出てきて、いい意味で期待を裏切られました。

年齢層も想像以上に若かったです。クオリティを見て、「芸大生とか大人が多いのかな?」と思っていたんですが、授賞式に来たのは小学生で。「えっ?」って(笑)。スズキの上層部も含めて、ちょっとザワザワしましたね。「こんな子が作ってたの!?」と。

中村: 年齢は書いていませんもんね。

大瀧:そうなんですよ。だからこそ、現地で授賞式を開催したのは本当に良かったと思います。Springin’の常連の方たちもいらして、初対面でもお互いの作品を知っているから、会話が盛り上がっていて。すごい熱量だし、作品を通じてつながっているという世界観に驚かされました。想像を超えていましたね。本当にすごい世界だなと。

中村: ほとんどの受賞者(12人中11人)が授賞式に来られていましたよね。

大瀧:それも驚きました。本当に全国から来ていただいて。そのぶん想定以上に費用はかかってしまいましたが(笑)、本当にやって良かったと思っています。

中村: 授賞式は、本当にやって良かったですね。

大瀧:授賞式では、私たちが伝えたかったことをしっかり伝えられましたし、副社長をはじめとする経営層の方たちにも楽しんでいただけました。「こういう役員が大企業にもいるんだ」と感じてもらえたのではないかと思います。会場となったスズキ歴史館も、とても面白い場所なので、現地に来て楽しんでいただけたのは本当に良かったです。

中村: 受賞している子どもたちを見ている親御さんが、すごく嬉しそうでしたよね。

大瀧:本当に一番喜んでいたのは親御さんでしたね。受賞者本人は、けっこうケロッとしていて(笑)。たとえば「幸せを運ぶトラック」を作った小学生の兄弟なんか、あんなに素晴らしい作品を作ったのに、「そんなに深く考えてません」みたいな感じで、全然緊張していなかったんですよ。でも親御さんはすごく喜んでくださっていて、それを見て「やって良かったな」と思いました。

中村: しくみのスタッフも、Springin’ユーザーも、このコンテストを通じてスズキのファンになりました。

大瀧:本当ですか、それは嬉しいです。

中村: 今まで意識していませんでしたが、あれから軽トラにすごく目がいくようになりました(笑)。

大瀧:それは本当に、狙っていた効果のひとつです。軽トラって、実はものすごく活躍しているんですよ。でもそのことに、うちの社員ですらあまり気づいていないんです。軽トラのチーフエンジニアや、軽トラ好きな人、あるいは農家の方など、身近に使っている人は理解しているんですが、本当に一部なんですよね。あまりにも当たり前すぎて、その価値に気づいていない。だから社内も含めて、多くの人に軽トラの使い方や活躍の場を考えてもらえたら、大きなインパクトがあると思ったんです。

今回の受賞者の方々も、軽トラについてかなりの時間考えてくださったと思うんです。きっと、軽トラのこと、ちょっと好きになってくれているはずです(笑)。

中村: なってると思います(笑)。

大瀧:それがすごく良かったですね。ただ、それだけだと「押しつけ感」があるので、作品を作る過程も楽しめるという点にフォーカスしたコンテストにしたいと思っていました。

 

コンテストの価値

 

中村: Springin’でコンテストをやるべき理由、何かあると思いますか?

大瀧:むしろ「やらない理由」は2つだけだと思っています。1つは社内で企画が通らないこと、もう1つは予算がないこと。でも正直、どちらも熱量でカバーできると思っています。僕も今回、熱量だけで企画を通しましたけど、それ以上の成果というか、予想を超える、期待以上の結果が得られたと思っています。

だから本当に、小規模でもいいので、ぜひチャレンジしてほしいと思います。

当たり前になりすぎて、自社では気づけない価値や使い方が、コンテストを通してたくさん見えてきました。外からアイデアや意見をもらうことで、自社製品の価値を再定義する。そんな使い方もあるんだなと思いました。

僕たちは今回、「未来の仲間づくり」にフォーカスしていたので、軽トラをどうにかしようという意図はなかったんです。でも軽トラには60年の歴史があって、これまで「幸せを運んできた」。ではこれからは何を運びますか?というテーマを投げたときに、「変形ロボになります」とか、「ペットとして育てます」とか、「海の中を走って海洋ゴミを回収します」とか、そんなの思いつかないですよね(笑)。

そういう実現性を無視して、「あったらいいな」を自由に描ける。このコンテストは、そんな素晴らしい機会になったと思います。

中村: ありがとうございます!未来の仲間づくりに関しては、まだ目に見える結果は出ていないと思いますが、直近で何か変化があったことはありますか?たとえば社内で。

大瀧:社内で言うと、これを機にSpringin’を始めた社員もいますし、実際にコンテストにもスズキ社員がいくつか作品を出してくれました。

中村: そうだったんですね!

大瀧:触るのも初めてだったので、もちろん入賞レベルというわけではありませんが、「難しいな」と思いました。これを小学生のうちからやっているなんて、本当にすごい才能ですよね。その才能に出会えたことが、ひとつの大きな成果だと思っています。

今回の受賞者を含め、約300人の応募者の中から、将来的にスズキに入社…とまではいかなくても、「スズキと一緒に未来をつくる」という選択肢のひとつとして考えてもらえるようになれば、それだけで十分だと思っていますし、実際に手応えも感じています。

社内でも、「軽トラを初めてちゃんと見ました」という社員がいたり、軽トラを“痛車”にしている人がいたりと、いろんな発見のきっかけになりました。それから、お父さんがスズキに勤めていて、元々Springin’が好きだったお子さんから、「好きな会社同士がコラボしてくれて嬉しいです」というコメントをいただいたりもして、それを聞いて、「社員の親子間のコミュニケーションツールとしても使えるんじゃないか」と思いました。

中村: お父さんが勤めていても、子どもは意外と会社のことを知らなかったりしますよね。軽トラのことを調べるきっかけにもなりそうです。

大瀧:そうなんですよ。実はお父さんだって、軽トラについて詳しいとは限らないんです。スズキの社員でも、軽トラのことを熱く語っているのは珍しいので(笑)。

でも今回のコンテストで話したようなことを、同期に話したら「なんかやる気出た」って言われたり。外で授賞式の話をしたとき、自分でもちょっとウルウルきてたんですが、その話を聞いて号泣した人もいたりして。

普段の仕事で感動して泣くことなんて、なかなかないと思うんですけど、Springin’のコンテストの前後は、そういう熱がこみ上げてくる場面がすごく多かったです。私自身もそうですし、多分、心が動いた人ってたくさんいるんじゃないかなと思います。

中村: 大瀧さんは軽トラの担当なんですか?

大瀧:そもそも僕には明確な担当がなくて。でも、軽トラに限らずいろんなことに対して熱量が高いんです。浜松のこととか、スズキにまつわる開発の話とか、面白いと思ったものはどんどん伝えていきたいと思っていて。その中のひとつが軽トラだっただけです。

コンテストの第1回目として、軽トラはちょうどよかったんですよね。軽自動車でも良かったんですが、範囲が広すぎてしまうんです。

中村: 広いですね、確かに。

大瀧:自動車と軽自動車って、結局そんなに差がないので。それよりも軽トラの方がキャッチーで、「何これ?」って興味を持ってもらえるんじゃないかと。

軽トラが60年の歴史で運んできたのは各ご家庭の幸せや大きな未来で、軽トラが無かったら自分たちも生まれてなかったかもしれない。こんな話を、軽トラのアシスタントチーフエンジニア(軽トラの商品開発をまとめるチーフのアシスタント)の社員に話したら、「すごくやる気出ました!」って言ってもらえて。社内でもこういう話をすると、みんなの熱量が高まるんですよね。

それで、「これを世の中に、子どもたちに伝えたい」と思ったんです。まだあまり伝えられていない部分もあると思いますが、この背景とセットで、作品を遊べる場を今後つくっていきたいですね。

 

浜松の「やらまいか精神」

 

中村: スズキは『魔改造の夜』(※超一流のエンジニアたちが極限のアイデアとテクニックを競う、NHKの技術開発エンタメ番組。Sズキ社として出演)にも出演されていたりと、とにかく熱量の高い会社ですよね。

大瀧:他の大手企業だったら、普通はロジカルに考えて「やらないでしょ」っていう企画、ありますよね。今回の「10年後の採用のための企画」なんて、その最たる例です。でもスズキでは「まあ面白そうだからやってみようか」って、わりと軽いフットワークで動ける。そういうのが大事だと思ってます。

副社長も授賞式で語っていましたが(なんならTシャツまで着てきていましたが)、やってみなきゃ分からない。「やらまいか精神」っていうのが、もともと浜松にはあるんですよ。

中村: 「やらまいか精神」?

大瀧:しのごの言わず、とりあえずやってみようよ」という意味ですね。浜松にはそういうベンチャー精神というか、文化を持っている会社が多い。

普通はやらないと思うんですが、2024年の5月に起業したばかりの宇宙ベンチャーと、たった3か月でイベントを作る、なんてこともやっちゃうんです。売上とか関係なく、「浜松を盛り上げたいから」って。
そういうことができちゃうのは、浜松という地域性や文化の強みだと思っています。

中村: それもやっぱり、大瀧さんの熱量が発端ですか?

大瀧:いや、僕だけじゃなくて。今回は3社でやったんですけど、3社とも本当に熱量が高かったんです。「じゃあイベント、やっちゃいますか!」って、まずイベントをやることが先に決まって(笑)。「で、何やる?」ってなったとき、「宇宙ベンチャーだから宇宙テーマでいきましょう」と。それならスズキには、「未知の場所に行けるワクワク感のあるジムニーがあるので、宇宙仕様にラッピングしましょう」となって。ただそれだけで進めちゃいました(笑)。

そのイベントも、授賞式と同じスズキ歴史館で開催したんですが、たくさんの子どもたちが来てくれて、イベント自体も大好評でした。
想像以上の反応やアイデアもいただいて。「やらまいか」の良いところって、「やってみたらこんなに面白いことがわかった」という発見があるところなんですよね。こういうことを「面白がれる力」ってすごく大事だと思うんですが、その力が高い人が浜松には結構多い気がします。

 

このコンテストを通じて、スズキとSpringin’が大切にしている“ものづくりを楽しむ心”は、きっと多くの人たちに届いたはずです。
子どもたちの自由な発想と、大人たちの情熱が交わったこの体験が、誰かの心に残る特別な思い出となってくれたら嬉しいですね。

第2回コンテストにも、自然と期待が高まります。
また新たな「ワクワク」に出会える日を楽しみにしています!

 

 

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